新着情報

お知らせ(会員限定)

2020.06.02

お知らせ(プライベートでレッスン、その他)

 

 

 

6月から土日のプライベートレッスンを少しずつ復活させます。

 

 

教師と生徒間の距離は5、6メートル取って行われます。

 

 

プライベートレッスン

の内容は、文法解説、長文読解の方法論、英単語増強法、学校教科書解説、英検対策など、リクエストがあれば承ります。特になければ、こちらで最適なものを提供いたします。

 

 

◯プライベートレッスン(無料)

日程 6/6(土)、6/7(日)

時間帯 13:00〜17:00

対象 希望者のみ

レッスン時間1人1回25分

 

 

メールにて受付中(お申し込み順締切)

 

 

お申し込み例

→「6/6(土)の15:00前後をお願いします。」

返信例→」14:30-14:55でお取りできました。」

 

 

1人に割ける時間が短めですので、遅刻はNGでお願いいたします。お時間ちょうどくらいにお越しください。

 

 

 

 

◯メール&自立

たしかに現代は情報過多の時代であり情報の多さに個人が埋もれてしまいがちです。

しかしながら、自分にとって必要な情報とそうでないものを識別することが今後最大級に必要な能力となります。

 

 

生徒の方で、メールを全く見ていない人がいることが判明しています。

 

メールを見ることができる環境を整えてください。

色々なサイトなどにメアドをたくさん登録してしまい、迷惑メールに埋もれて何も見れないという状況もあるようです。

 

 

中高生になり、なるべく自分のことは自分で行うべきであることを家族間でお話しになってください。

 

 

自分の身の回りで何が行われているのかという現実に関心が持てない人は、いくら勉強に時間を費やしても身につくことはありません。

その場合、誰かにやれと言われたからやっているという勉強自体が他人事になっています。

学んだことは自分とは関係のないこととして脳や身体が処理しています。

いくら勉強しても点数に結び付かないという人は、この辺に問題があるようです。本人は時間を費やして努力しているわけですからより悲劇的と言えます。

 

 

もちろん保護者の方も、最大限の努力を行なっているはずです。

しかしながら、現実的なデータによると保護者の方の子どもに対しての一生懸命さ(何でも親がやってあげること)と子供たちの自立性は反比例する場合が多いと言われています。

 

 

どうか、今回のパンデミックを機会に家族間でお話の場を設けて、自立という点に関心をもっていただければと思います。

 

 

アフターコロナの世界は、自立できない人にはさらに厳しい世界となります。自ら世界を切り開くことのできる自分の身を守るための知性を身につけてください。

 

 

 

 

宜しくお願い致します。

 

  

 


post-covid19 通信 No.8

2020.05.27

post-covid19通信 No.8

 

 

 

1894年

1904年

1914年

 

 

上の年度を見て直ちに何かを感じ取れますか?

 

 

先ずは法則性から眺めてみましょう。間隔が10年であることが分かります。

 

 

次に末尾の数字を見てみましょう。全て「4」=「死」となっています。覚えやすいですね。

今回は「死」についても考察します。

 

 

1894年 日清戦争

1904年 日露戦争

1914年 第一次世界大戦

 

 

戦争は「4=死」で始まり、暫くした後に終結はしますが、10年も経てば人間の記憶は薄れて再び惨禍を招きます。

 

 

今回は、この小さな年表の少し後で起こることになるパンデミック「スペイン風邪」を少し眺めてみましょう。

 

 

歴史を学ぶことに意味がないという人が多くいますが、個人にとって本人の過去の記憶が未来の行動に指針を与えるように歴史は人類全体の記憶であるように思えます。

 

 

 

 

さて、「スペイン風邪」と聞けば、誰でも自動的にスペインがこのパンデミックの中心地、発祥の地と思うのが普通だと思います。しかしながら事態はそう単純ではないようです。

 

 

当時は第一次世界大戦下であり、参戦国は厳しい情報統制を敷いていましたが、中立の立場を保っていたスペインでは情報統制がなかった。故にその汚名を着せられてしまった、という経緯があります。

 

 

尚、スペイン風邪の起源に関しては諸説あり、フランス起源説、アメリカ起源説、中国起源説など。完全にパンデミックの起源を特定するのは相当難解な作業のようです。

 

 

 

 

世界中で5億人(当時の世界人口の4分の1程度)が感染したと推定され、死者数5,000万人とも言われる「スペイン風邪」前後の歴史の流れを見ておきましょう。

 

 

※第一次世界大戦の全世界での死者数は推定1,600万人。

 

 

 

 

                 ✴︎

 

 

1914-1918年 第一次世界大戦

1918-1920年 スペイン風邪

1919年 パリ講和会議

1923年 関東大震災

1929年 世界恐慌

1930年代 電子顕微鏡の発明

 

 

                ✴︎

 

 

以下、日本における戦争や事故、病気での死者数のデータを少し見てみましょう。

 

 

 

※死者数は、データの取り方によって異なる場合があります。

 

 

 

・スペイン風邪による日本での死者数を約45万人と推定してる研究者がいます。

 

 

・関東大震災での死者数は、

約10,5000人。

 

 

・日露戦争での戦没者が、

約84,000人。

 

 

・通常の季節性インフルエンザで毎年約10,000人の死者数が出ます。(世界での年間死亡者数は25万人から50万人。)

 

 

 

・肺炎で毎年約90,000人が亡くなります。

 

 

・毎年の自殺者数は、約20,000人から30,000人

 

 

 

・2019年の交通事故での死者数は3,215人。

 

 

・毎年1月に餅で喉を詰まらせて亡くなる方は約1,300人。(食品全般による窒息での死亡数は毎年約9,000人)

 

 

 

・covid19 での死者数は、

851名(5/26現在)。

 

 

 

 

たしかにcovid19 は危険なウイルスですので私たちは十分注意しなければなりません。油断禁物。しかしながら、私たちの日常生活の中には他にも多くの危険が潜んでいるようです。時々、注意喚起すべき項目も多くあるように思えます。

 

 

       ✴︎

 

 

1930年代になって漸く電子顕微鏡が登場し、ウイルスを観察できるようになりました。スペイン風邪はA型インフルエンザウイルスが原因であることも突き止められました。

 

 

インフルエンザが人類の間に定着したのは、家畜を飼いながら集団生活を始めた紀元前5,000年頃と言われています。

 

 

古代ギリシャの医師ヒポクラテスは、紀元前5世紀にインフルエンザと思われる病気の記述をしているようです。

 

 

歴史上、次のインフルエンザに関する記述は15〜16世紀のヨーロッパまで待たねばなりません。

 

 

インフルエンザという名称は、ラテン語のinfluo(流れ込む)という動詞から作られた中性ラテン語influentia (流れ込んで来るもの)に由来しています。中世イタリアでその名称が最初に採用されたようです。

 

 

ここで言う「流れ込む」という意味は「星からの流れ」を指しています。天体の影響が原因と考えられていたようです。その当時ウイルスという概念はありません。

 

 

古典ラテン語では、virusは「粘液、毒」という意味になります。いわゆる「ウイルス」の意味になるのは先程も眺めた1930年代の電子顕微鏡による「ウイルスの発見」を待たねばなりません。

 

 

人類とウイルスは切っても切れない関係にあり、常にいたちごっこを続けています。ウイルスは進化し続けます。

 

 

したがって、多くの人がパンデミックを予想してシュミレーションを行いますが、中々うまくいきません。

 

 

実は、2019年10/18にアメリカでジョンズホプキンス大学、世界経済フォーラム、ビル&メリンダ・ゲイツ財団が主催してA global pandemic exercise Event 201という会議が開かれていました。

 

 

もちろんWHO も関わっています。アメリカのCDCからの代表や中国のCDCからの代表も顔を出しています。日本の厚生労働省の方が出席していたかどうか分かりません。詳しい方がいましたら教えてください。

 

 

この10/18の会議の中で「新型コロナウイルス」が南アメリカで豚から農業者に感染して、深刻な肺炎を引き起こし、やがてパンデミックが起こっていく過程を想定しています。日付の10/18に注目してください。

 

 

この10/18のシュミレーションのちょうど1、2ヶ月後に中国の武漢で実際にこれと同じようなことが起こり、全世界に衝撃が走ります。想定とほぼ同じ「新型コロナウイルス」によるパンデミックです。

 

 

 

 

この会議の模様は、YouTube で見ることができます。英語での説明ですが、字幕付きのものもあります。興味のある方はご覧ください。

 

 

ただし、こういうのを見て直ぐに陰謀論だと大騒ぎしそうな人は頭を冷やす必要はあります。

 

 

2011年の映画「コンテイジョン」でも殆ど同じような内容を想定しています。ここにもやはり陰謀論者が現れます。映画のキャッチコピーは「恐怖はウイルスより早く感染する」です。

 

 

今回のcovid19 パンデミックは、少なくとも人類史に興味のある人であれば、それがいつなのかは分からないまでも、誰でも予想可能な事柄だったわけです。

 

 

しかしながら、暫くは陰謀論が流行るかもしれませんね。今回のcovid19 のパンデミックは、ビル・ゲイツが黒幕だと叫んでいる人間が既に現れて来ています。

 

 

世界は変化し続けています。しかしながら繰り返される事象も多くあります。ウイルスによるパンデミックもその一つです。

 

 

ビル・ゲイツは数年前からウイルスの脅威に警鐘を鳴らしていました。予言でも陰謀でもありません。単純に歴史的な知識と統計学がそこにあります。さらに、善意があると信じたいです。

 

 

私たちも今回のcovid19 を機に今一度、私たち人類の歴史を丁寧に見つめ直し、人類の記憶を心に留め、私たちがより良く未来を見ることができるように、しっかり前方を照らすためのヘッドライトにしていく時なのかもしれません。

 

 

Better together

                            竜崎克巳

 

 

 

 

  

 


お知らせ(ラテン語・古典ギリシャ語)

2020.05.22

お知らせ(ラテン語・古典ギリシャ語)

 

 

今まで「ラテン語・古典ギリシャ語単語の作り方」として配信させていただいておりましたが、次回から両言語を分けての配信となります。

 

 

「ラテン語の語形成」

 

 

「古典ギリシャ語の語形成」

 

 

ラテン語と古典ギリシャ語の両言語をそれぞれの枠組みに分離して考察していく予定です。

 

 

テーマは、そのまま継続的に「語形成」についてです。

 

 

 

 

語形から品詞をひと目で見極める方法(接尾辞を意識すること)や記憶を確かなものにして語彙力を身につけることを狙いとします。

 

 

メール配信の性質上、両言語の内容とも配信されます。

必要のない方の言語は、適当に処分でお願いいたします。

 

 

単語だけについての考察ですので、ターゲット言語が未学習の人も読めると思います。

 

 

ギリシャ文字も以外に簡単に覚えられます(3日間のしんぼうです)ので、こういった機会に読めるようにしてしまうのも一つの方法です。

 

 

参考までに、ラテン語と古典ギリシャ語の文法書を、それぞれ1冊ずつご紹介いたしました。

 

 

◯ラテン語『初級ラテン語入門』

有田潤(白水社)

全体にシンプル。

練習問題の解答も付いている。

但し、これ一冊で文法が全て網羅されているわけではない。

 

 

◯『ギリシア語四週間』古川晴風(大学書林)

練習問題の解答が付いている。

文法は、ほぼ全て網羅されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

また、ことわざ/名言編は別の機会に譲りたいと思います。

 

 

※ギリシャ語はギリシャ文字で表記します。

 

 

授業の9月再開までの期間に、私たちの語彙力を少し強化したいと思います。ノートに移したり、ただ眺めたり、それぞれ最適な方法で良いかと思います。

 

 

日本語を見て、すぐにターゲット単語を思い出す練習用に小さなブロックに整理して小テストができるようになっています。

 

 

語形成についての分かりやすくまとまった本は、いくら探しても見つからないので、今回の配信が少しでもご参考になればと思います。

 

 

——————————————

 

 

以下、「ギリシャ語の語形成」の一部サンプルです。

 

 

 

 

◯形容詞の男性・複数・属格の-νを-ςに取り替えて作るシステム

 

 

※高津春繁によると、

この-ωνの副詞形成のシステムは「本来ablativeの語尾-ωに、副詞の語形を拡大するに用いられる-ςがついた形であろう。」ということです。

 

 

例)

δικαίως < δικαίων < δίκαιος

   副詞    < 
複数属格 
< 形容詞

  正しく       正しい

 

 

 

 

以下は、複数属格を省略します。

 

 

              副詞  <  形容詞

 

 

1 σοφώς        <  
σοφός

2 καλώς        <  
καλός

3 κακώς        <  
κακός

4 ισχυρώς   
<   ισχυρός

 

 

日本語は、形容詞の訳語のみ記してあります。

 

 

1 賢い

2 美しい

3 悪い

4 強い

 

 

—————————————

 

 

 

 

よろしくお願いします。

 

 

 

 

Stay home, and stay cool.

        竜崎克巳

 

  

 


post-covid19通信 No.7

2020.05.20

post-covid19 通信 No.7

 

 

 

今日は、タイからの情報をご紹介させていただきます。

 

 

タイの首都であるバンコクから始まり今やタイ中に広がりつつあるその運動は、pantry
of sharing運動と呼ばれています。

 

 

pantryは、「食料品棚」の意味で、sharingは「余った食料をシェアする」くらいの意味です。

 

 

タイ語では「トゥーパンスック」と言います。「トゥー」は「箱」、「パン」は「共有する」、「スック」は「幸せ」を意味します。「幸せを共有する箱」くらいの意味です。

 

 

「幸せを分けあうボックス」

 

 

タイではcovid19によって職を失った人が多く、その日の食べ物にも困っています。もちろん、ボランティアの方々が炊き出しも行っておりますが、それだけでは賄いきれません。

 

 

生活に困窮した人々を助けるための運動がこのpantry of sharingです。

 

 

システムは簡単です。道端に食器棚のような箱を置きます。そこに、少し生活に余裕のある人が食料や備品などを置いていきます。

 

 

英語の説明では以下のような単純明快なフレーズを見かけました。

 

 

 “Give what you can,

  
take what you need. “

 

 

「余裕のある人は持ち寄り、

 

必要な人は頂きましょう」

 

 

 

 

食べるものにさえ困っている方々は、その箱から自分に必要な食料をもらっていきます。ノートがあり、感謝の言葉を述べます。実にシンプルです。

 

 

始めは、このような運動はうまくいかないだろうと懐疑的な目で眺めていた人たちも多かったようです。

 

 

しかしながら、やらないよりやった方が良いのです。様々な問題は必ず起こります。そんなことを恐れていても何も解決できません。本当に困窮している人が今そこにいます。

 

 

単に募金するなどの行為より現実的に人助けに直結します。自分も困窮しているにも関わらず、自分よりも困っている人をみんな助けようとしています。

 

 

また、このことで助けてもらった人が余裕を持てたら、自分もほんの少しの食料をこの箱に持って来て恩返しが可能です。このように食料をシェアすることで幸せの輪を広げようという運動です。

 

 

タイに一度でも訪れたことのある人なら誰でも経験しますが、必ず笑顔で迎えられます。そしてタイを出国する時にはきっと自分が笑顔になっています。笑顔は伝染しますので。

 

 

 

 

タイでは「タンブン」という考え方が根付いています。タイの人はほとんどが敬虔な仏教徒です。

 

 

タンブンの「タン」は「行う」、「ブン」は「善」を意味します。簡単に言えば「善行を行い、徳を積むこと」です。お寺に参拝したり、お坊さんにご飯などを渡したり、貧しい人にお金や食物を恵んだりすることです。

 

 

 

 

3月、4月の段階では、欧米では中国に恨み節が炸裂し、更にはアジア系の人々にまで偏見が猛威を奮っていました。

 

 

しかしながら、パンデミックの大きな危機を乗り越えた後には、人々は前にも増して良好な国際間の人間関係が築けるかもしれません。もちろん一部の国同士の反発は避けられない可能性は秘めていますが。

 

 

危機は変化をもたらし、人々は既存の価値観に疑問を呈するようになるかもしれません。世界が大きく変わる可能性を孕んでいます。

 

 

タイでの「幸せを分けあうボックス」運動は、covid19の感染拡大に伴って普及しました。人々は自分が人に対してできることを淡々と行っています。人に何かをしてあげることで実は救われるのは自分なのかもしれません。

 

 

 

 

◯「ラテン語・古典ギリシャ語単語の作り方」は、次回から両言語を分けて、それぞれ

 

 

「ラテン語の語形成 」

「古典ギリシャ語の語形成」

 

 

とさせていただきます。該当する方には、後ほど、詳細メールがが配信されます。

 

 

 

 

 

 

  
Stay home, and stay cool.

                           竜崎克巳

 

 

  

 


post-covid19 通信 No.6

2020.05.13

post-covid19 通信 No.6

 

 

 

前回私が使用した語句の訂正をさせてください。申し訳ありません。

 

 

Y先生からのご指摘がありました。ありがとうございます。

 

 

心身一如 → 身心一如

 

 

身が先で、心が後です。

 

 

先ず身体があって、次に心なんですね。「身」と「心」という言葉の扱いにおける歴史を調べるのも面白そうですね。

 

 

養老孟司が『日本人の身体観の歴史』(法藏館)の中で、中世の身体観を論じていて、そこで道元の身心一如を取り上げています(p.213)。

 

 

普段あまり使わない語句を書くときには、辞書で確認した方が良いことが分かりました。

 

 

 

 

 

 

さて、私たちは数回に亘ってcovid19(パンデミック)によって引き起こされたプラスの側面を眺めています。

 

 

今回は、文学の誕生あるいは再発見に焦点を当てましょう。

 

 

 

「セレンディピティ」という言葉をご存知でしょうか?

英語のserendipityをそのままカタカナにしたままですが、適した訳語が見つかりませんので、セレンディピティでいきます。

 

 

この語の語源やエピソードについては「英単語の作り方:特別編シリーズ」にて後日お話しさせていただきます。

 

 

セレンディピティとは、私たちがまさかの境遇に遭遇した場合に、予測していない偶然によってもたらされる幸運、または幸運的な発見のことを言います。

 

 

ただし、いつも心の準備をしておくことが必要です。「棚からぼた餅」ではなく、予期せぬ幸運に巡り合う能力のことと言えそうです。

 

 

自分の身の回りで起こってることに無関心な人には厳しそうです。

 

 

現在、私たちはcovid19によって引き起こされつつある人類史上最悪の災禍のトンネルの入口に到達したところです。

 

 

この最悪最低の状況の中で、自分にとって最も大切なものが発見できる人もいると思います。広い意味で、これもセレンディピティと考えることができるかもしれません。

 

 

人類史におけるパンデミックの歴史は、また別の機会に眺めていきましょう。

 

 

今回は、パンデミックによって生み出された文学作品を考察していきます。

 

 

covid19がパンデミックになった後で、今まではそれほどは読まれていなかったある本が突如ベストセラーになりました。

 

 

それはノーベル文学賞作家のアルベール・カミュ(1913-1960)の『ペスト』です。

 

 

『異邦人』は読んだことがあっても意外に『ペスト』は読まれていないもので、もしかしたら今回、購入された人もいるのではないでしょうか?

 

 

傑作ではあるけれど今まで埋もれていた作品が、時代を隔てた別のパンデミックによって、私たちの手元に入って来たこと、これもまた広い意味ででセレンディピティと考えることができるかもしれません。

 

 

大切なものはいつも目の前にあるけれど、中々気付くことができないということかもしれません。

 

 

さて、『ペスト』を少しのぞいてみましょう。

 

 

舞台は、カミュの出身地アルジェリアのとある街。一匹のネズミの死から小説はスタートします。徐々に町にはペストが蔓延していきます。そして…..

内容は、読んだ方が私の下手なあらすじより断然ベターです。

 

 

一部フレーズを眺めてみましょう。

 

 

 

 

「天災というものは、事実、ざらにあることであるが、しかし、そいつがこっちの頭上に振りかかってきたときは、容易に天災とは信じられない。」

 

 

covid19の災禍の元で暮らす私たちもしばらくは、このような状態でしたね。

 

 

『ペスト』の主人公医師リウーは言います。

 

 

「ペストと闘う唯一の方法は誠

実さだ」

 

 

 

 

 

 

現在、世界各国において、政府による非常事態宣言での自粛要請がなされていますが、これは言うなれば私たち自身が自分たちの日常生活から追放されたことを意味します。

 

 

 

金魚鉢の中から金魚がさっと掬い上げられ、床に放りなげられて、「君たちが金魚鉢で泳いでいると他の人がcovid19で死んでしまうんだよ、しばらく床にいたまえ」と、床でピクピクしている金魚に向かって偉い人が語りかけている、そのような現実に私たちは今直面しています。

 

 

このような現象をカミュは、不条理という言葉で表現しました。

 

 

 

 

私たちは、カミュが感じたのと同様に、現在、集団的不条理に襲われています。しかしながら、私たちは自分のできる小さなことを見極めて、誠実さを武器に行動する以外に他に手段はなさそうに思えます。

 

 

ただ忘れてはいけないのは、健康第一ということです。この病気にかからないように努力しましょう。人間にとって身体が最も大切です。

 

 

 

 

ペスト関連の文学では、古い作品ではありますが、ボッカッチョ(1313-1375)の『デカメロン』も読みたいですね。タイトルを日本語にすると「10日間」です。ペストから逃れて引きこもり生活をしている人達の10日間の暇つぶしで100の物語を語り合います。

 

 

この作品は、チョーサー(1343-1400)の『カンタベリー物語』や『千夜一夜物語』のような形式と言えばイメージしやすいでしょうか。

 

 

ペスト関連では、『ロビンソン・クルーソー』で知られるダニエル・デフォーも『ペスト』という作品を残しています。

 

 

 

 

その他、ペスト関連で生まれた大切な英単語「quaratine(検疫)の語源」や医学的に重要な貢献を行った「北里柴三郎(1853-1931)」については、Googleで調べてみましょう。

 

 

 

 

パンデミック関連の作品では、小松左京(1931-2011)の『復活の日』があります。これは映画(1980年)の方が有名になりました。主演の草刈正雄がいい味出しています。

 

 

ここでのウイルスは生物兵器として開発されたもので超強力です。地球上での最終的な生存者は百人くらいだったような。

 

 

最近の映画では『コンテイジョン』(2011年)というパンデミック映画があります。この映画の設定は、私たちが現在covid19によって被っているシュチュエーションとそっくりです。

 

 

映画としての盛り上がりには欠けますが、ウイルスそれ自体よりパニックになった人間の行動の方が恐ろしいということが描かれていて私たちの現状と同じです。

 

 

現実の話として、この『コンテイジョン』の医療監修を務めた医師が、今回のcovid19に感染しました。軽症で済んだそうですが、油断禁物であることを私たちに語りかけてくれます。

 

 

パンデミックにより創造された文学作品や映画は、まだまだ沢山あります。また別の機会に眺めてみましょう。

 

 

パンデミックがあったが故に、人間の想像力が刺激され様々な文学作品や映画が生まれます。常にそこには人間の前向きな姿勢、場合によっては笑いをも齎そうとする努力があります。人間は、苦悩を作品に昇華させる力をもっていると言えそうです。

 

 

パンデミック文学/映画が私たちに伝えてくれているのは、本当に危機的状況に私たちが直面すると、その人が生まれ持っている資質が倍になって現れて目に見えてくるということです。

 

 

 

卑怯な人はより卑怯に、臆病な人はより臆病に、誠実な人はより誠実に、正義感の強い人は正義の斧を振るい、自分の考えとは異なる人を叩き斬ろうとします。

 

 

 

 

さて、最後にカミュの『ペスト』の締めくくりのフレーズを眺めてみましょう。翻訳は、宮崎嶺雄。

 

 

 

 

「ペスト菌は決して死ぬことも消滅することもないものであり、数十年の間、家具や下着類のなかに眠りつつ生存することができ、部屋や穴倉やトランクやハンカチや反故のなかに、しんぼう強く待ち続けていて、そしておそらくはいつか、人間に不幸と教訓をもたらすために、ペストがふたたびその鼠どもを呼びさまし、どこかの幸福な都市に彼らを死なせにさし向ける日が来るであろうことを。」

 

 

今回、covid19は、私たちにどのような教訓をもたらすために、やって来たのでしょうか?

 

 

いつもは目に見えないほど小さなその体が、このように巨大な怪物の姿をとって私たちを襲撃するからにはそれなりの意味があるのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

Stay home, and stay cool.

 

       竜崎克巳