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< 英単語の作り方 >1(形容詞を作る)
[接尾辞 -ful / -less]
careful(注意深い)とcareless(不注意な)、それにharmful(有害な)とharmless(無害な)などの対概念の単語を並べてみると、語尾の -fulと -lessが反対概念を担っていることは直感的にも見て取れる。このように基本となる語の後ろに取り付ける接辞は、接尾辞と言われている。単語を作り出す際に、接尾辞は極めて有益な働きをしている。今回は -ful(~でいっぱいの)と -less(~がない)という生産性の高い2つの接尾辞について見ていこう。以下の例のように形容詞を作る働きがある。尚、すべてペアで存在するわけではなく、-lessの方が頻度が高い。
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1) meaningful 意味深い
2) meaningless 意味がない
3) thoughtful 思いやりのある
4) thoughtless 思いやりのない
5) useful 役に立つ
6) useless 役に立たない
7) fruitful 実りある
8) fruitless 実りのない
9) merciful 慈悲深い
10) merciless 無慈悲な
-lessにおいて、次の単語では意味の上での注意が必要。pricelessでは、「価値がない」ではなく、「価値がつけられないほど高価な」の意味になる。
11) priceless 値段がつけられないほど高価な
12) countless 数えられないほど多くの
13) numberless 無数の
14) tireless 疲れを知らない
15) timeless 時間が計れないほど長い間の
次の単語の意味を考えてみよう。ruth(哀れみ)やreck(用心する)のように根幹となる基本語が、現代語ではほとんど使われなくなった例もある。
1) painful
2) ruthless
3) reckless
4) moonless
5) awful
6) sleepless
7) helpless
8) youthful
9) cheerful
10) ageless
解答
1) 痛みをともなう 2) 容赦ない 3) 向こう見ずな 4) 月のない 5) とても悪い 6) 眠れない
7) 自分では何もできない 8) 若々しい 9) 元気のいい 10) 不朽の
-fulにおいて、基本語が動詞の場合には、forgetful(忘れやすい)のように動詞の性質を表した形容詞を作る。
1) neglectful 怠慢な
2) wasteful むだの多い
3) resentful 怒りっぽい
4) mournful 死者を悼むような
-fulにおいて、「~一杯(の量)」という名詞を作る場合がある。その時には、「入れ物」的なものが基本語になる。
1) spoonful スプーン1杯
2) cupful カップ一杯
3) handful 一握り
4) basketful かご一杯
セム語と印欧語の語根
アラビア語やヘブライ語やアッカド語などのセム語の学習に取り掛かると誰でも、事象を切り取るその文法の切り口が印欧語(ラテン語、ギリシャ語、サンスクリット語、ドイツ語、英語、フランス語など)とはかなり異なることに驚くものである。その一つに、子音(主に3子音)で構成される語根という概念がある。たとえば、アラビア語では「書く」という意味の語根は*ktbである、という言い方をする。この3つの子音に母音を挟むことや接辞などを付加することで単語を作り出していく。
ここでは、語根*ktbを大文字で表記して単語の構成を視覚的に確かめていこう。KaTaBaとすると「彼は書いた」となり、KaaTiBは「作家」、KiTaaBは「本」、maKTaBは「図書館」という具合である。意味の中心を構成する子音は硬質な石のイメージで、母音はその3つの石をつなぐ柔らかな粘土のような接着材的役割を果たしているように見える。セム語においては、このように語根を中心に語が形成されるシステムに特徴がある。
このシステムをゲルマン系英単語に応用してみると、BeaR, BoRe, BoRn, BuRden, BiRth からBとRを抽出し、「生む;耐える」の語根は*brと言えなくはない。SiNG, SaNG, SuNG, SoNGの語根は*sng(ngは1つの語根と考えるべきであろう)であり、GiVe, GaVe, GiVen, GiFtの語根は*gv(fはvの無声音なので、この2つは同じものと考えることができる)である。ゲルマン系英単語の語根は2つの子音であった!
しかしながら結局のところ、これは印欧語の文法家の言う母音交代、つまりAplaut(アプラウト)であって、セム語の語根活用システムとは異なるように見える。アプラウトについては、また別の機会に考察していこう。何れにせよ、印欧語もセム語も、それぞれの単語の意味の中核は子音が担っており、母音は補佐役と言えよう。
July for Julius Caesar
「7月」を表す英単語Julyにおいて、古代ローマの英雄Julius Caesarユリウス・カエサルにその名の由来があることは比較的多くの人に知られている。同様に、「8月」のAugustも初代ローマ皇帝Augustusアウグストゥスを語源としている。
ところで、ラテン語の数字7、8、9、10はそれぞれseptem、octo、novem、decemと表記するが、これらは英単語の月名に似ているようで、よく考えると2か月のズレがあることが分かる。この現象は古代における農耕と暦の変遷に起因する。
古代のロムルス暦は、その名称からも察せられる通り、前753年にローマを建国したと伝えられるロムルスによるものとされている。この暦は、春のMartiusが年始、つまり「1月」であった。「2月」以降は、順次、Aprilis、Maius、Junius、Quintilis、Sextilis、September、October、November、Decemberであり、農耕に適さない冬の2か月は月としてカウントしていなかったらしい。日としては1年は304日で、10か月であり、残りの約60日は名もなき厳しい冬であったのである。
その後、ロムルスの後をヌマという王が継承し、「名もなき冬」にJanuariusと Februariusという名称が与えられることになる。その後、暦の改善は前153年になされ、Januariusが年始とされるようになるが、依然として「3月」のMartiusが「旧正月」として共存していたと伝えられている。
前46年、ユリウス・カエサルによって1年365日のユリウス暦が定められる。ここにおいて、正式に年始(1月)はJanuariusであると公に決定され、したがってSeptemberが「9月」となり、ラテン語の数字と月名のズレが生じることになる。さらに、カエサルは自分の誕生月の「7月」のQuintilisをJuliusと改名する。
その後、アウグストゥスも、戦で勝利を収めた「8月」をAugustusに改めてしまう。以上は極めて単純化した説明であり、暦の変遷については『暦と占いの科学』(永田久著、新潮選書)に詳しく書かれている。
月名におけるラテン語の数字の痕跡は、octopus [octo 8+pus足](蛸)やdecade (10年)などの英単語の中に見て取ることができる。