Category

  • BLOG (103)

  • Archive

  • 2024年10月 (2)
  • 2024年7月 (2)
  • 2024年6月 (2)
  • 2024年4月 (1)
  • 2024年3月 (3)
  • 2024年2月 (4)
  • 2024年1月 (1)
  • 2023年11月 (3)
  • 2023年10月 (2)
  • 2023年9月 (2)
  • 2023年8月 (1)
  • 2023年7月 (1)
  • 2023年6月 (3)
  • 2023年5月 (1)
  • 2023年4月 (3)
  • 2023年3月 (2)
  • 2023年2月 (1)
  • 2022年12月 (3)
  • 2022年11月 (1)
  • 2022年9月 (1)
  • 2022年8月 (2)
  • 2022年7月 (1)
  • 2022年6月 (2)
  • 2022年5月 (1)
  • 2022年4月 (3)
  • 2022年3月 (4)
  • 2022年2月 (3)
  • 2022年1月 (3)
  • 2021年12月 (4)
  • 2021年11月 (5)
  • 2021年10月 (4)
  • 2021年9月 (7)
  • 2021年8月 (5)
  • 2021年7月 (8)
  • 2021年6月 (4)
  • 2021年5月 (1)
  • 2021年4月 (2)
  • 2021年3月 (5)
  • 2021年2月 (1)
  • 2021年1月 (3)
  • 2020年12月 (3)
  • 2020年11月 (1)
  • 2020年10月 (1)
  • 2020年9月 (3)
  • 2020年7月 (1)
  • 2020年6月 (6)
  • 2020年5月 (16)
  • 2020年4月 (20)
  • 2020年3月 (6)
  • 2020年2月 (4)
  • 2020年1月 (3)
  • 2019年12月 (3)
  • 2019年11月 (3)
  • 2019年10月 (2)
  • 2019年9月 (4)
  • 2019年8月 (2)
  • 2019年7月 (4)
  • 2019年6月 (2)
  • 2019年4月 (2)
  • 2019年3月 (4)
  • 2019年2月 (2)
  • 2019年1月 (1)
  • 2018年12月 (4)
  • 2018年11月 (1)
  • 2018年10月 (1)
  • 2018年9月 (4)
  • 2018年8月 (4)
  • 2018年7月 (2)
  • 2018年6月 (3)
  • 2018年5月 (1)
  • 2018年4月 (2)
  • 2018年3月 (5)
  • 2018年2月 (1)
  • 2018年1月 (5)
  • 2017年12月 (3)
  • 2017年11月 (3)
  • 2017年10月 (2)
  • 2017年9月 (4)
  • 2017年8月 (3)
  • 2017年7月 (2)
  • 2017年6月 (4)
  • 2017年5月 (1)
  • 2017年4月 (3)
  • 2017年3月 (2)
  • 2017年2月 (4)
  • 2017年1月 (6)
  • 2016年12月 (5)
  • 2016年11月 (3)
  • 2016年10月 (2)
  • 2016年9月 (6)
  • 2016年8月 (2)
  • 2016年7月 (1)
  • 2016年6月 (4)
  • 2016年5月 (2)
  • 2016年4月 (2)
  • 2016年3月 (5)
  • 2016年2月 (1)
  • 2016年1月 (2)
  • 2015年12月 (3)
  • 2015年11月 (3)
  • 2015年10月 (2)
  • 2015年9月 (4)
  • 2015年8月 (1)
  • 2015年7月 (1)
  • 2015年6月 (5)
  • 2015年5月 (2)
  • 2015年4月 (3)
  • 2015年3月 (5)
  • 2015年2月 (3)
  • 2015年1月 (3)
  • 2014年12月 (3)
  • 2014年11月 (4)
  • 2014年10月 (3)
  • 2014年9月 (3)
  • 2014年8月 (3)
  • 2014年7月 (2)
  • 2014年6月 (5)
  • 2014年5月 (2)
  • 2014年4月 (2)
  • 2014年3月 (6)
  • 2014年2月 (2)
  • 2014年1月 (4)
  • 2013年12月 (1)
  • 2013年11月 (2)
  • 2013年10月 (4)
  • 2013年9月 (4)
  • 2013年8月 (5)
  • 2013年7月 (4)
  • LINGUA MANIA ブログ

    visitの語源分析について

    2014.03.26

    visitの語源分析に関して、多くの英和辞典が [vis(見に)行く] としている。以下に各辞書の分析を眺めてみよう。

    1 )ウィズダム英和辞典:[(繰り返し)見に行く]

    2) プログレッシブ英和辞典:[見に行く]

    3 )ジーニアス英和辞典:[見に(vis)行く(it)]

    もう少し詳しい辞書になると次のようになる。

    4 )英語語義語源辞典:[ラテン語visitare(=to go to see)が古フランス語を経て中英語に入った]

    5)リーダース英和辞典:[OF<L(freq) 〈 viso to view; ⇒ VISION]

    6)ランダムハウス英和大辞典:1225年以前. 中期英語visiten(動詞)(<古期フランス語visiter)< ラテン語visitare(visere「見に行く」の反復形; visereはvidere「見る」の反復形)

     

    まずは、最初の3冊の分析を見てみよう。どれも似ているが1冊だけ他とは決定的な違いがある。それは『ジーニアス』の分析である。

     

    他の2冊では、it=「行く」という特定は避けてはいるが、visit全体として「見に行く」のニュアンスを出している。ジーニアスではvis=「見る」、it=「行く」と断定している。exit(出口)=[ex (外に)+it (行く)] やtransit(通過)=[trans (向こうに)+it (行く)]の類推であろうか?

     

    『ジーニアス』では、同一の単語の中に2つの動詞語根(この場合は「見る」と「行く」)を混在させていることになる。この分析は正しいのだろうか?

     

    動詞語根it(行く)について眺めてみよう。これはラテン語由来のものなので、少しだけラテン語の世界を探求しよう。左がラテン語で、右がその翻訳としての英語。

    eo      I   go
    is    You  go
    it     He  goes
    imus     We  go
    itis     You  go
    eunt     They  go

     

    ラテン語の動詞はそれ自体に人称を表す人称接尾辞が付加されているので、eoと言えば「私は行く」という意味になる。ラテン語では、1人称単数を基本形と考えるので、辞書ではこのeoという形が見出し語として現れる。ただし、この形では英単語の語根itを感じ取ることができない。

     

    次にラテン語eo(行く)に接頭辞ex-(外に)を取り付け「外に行く」という意味の複合語を作ると以下のようになる。

    exeo                I   go out
    exis               You  go out
    exit                He  goes out
    eximus         We  go out

    exitis             You  go out
    exeunt         They  go out

     

    3人称単数のexitに注目してみよう。これは英単語のexit(出口)の語源であるかのように感じるであろうが、大筋で当たっているものの微妙に異なる。ここで挙げたexitの-tは、人称接尾辞の-tであり、-i-は語根である。

     

    英単語exit(出口)の語源は、ラテン語の名詞exitus(出口)である。このexitusは、exeoの行為名詞であり、ここで現れる「-t」は語幹の一部と考えることができる。。この「it」が英単語の中に現れる語根「it(行く)」であると考えておけば良い。

     

    接頭辞とは、もともとは前置詞(副詞)であるものが、動詞の前方に付加され、複合語を作る部品になっている場合の名称である。たとえば、exは「~から」という意味の前置詞でもあり、動詞に付加した場合には接頭辞と呼ばれる。

     

    [ 接頭辞+動詞 ]       =     動詞複合語
    [ ex(外に)+eo(行く) ] = exeo (私は外に行く)

    人称を3人称単数にすると以下のようになる。
    [ ex(外に)+it(行く) ] = exit (彼は外に行く)

     

    次に、3人称単数を一応ここでは基本形とし、ラテン語の複合語を[他の接頭辞+it(行く)]の組み合わせで眺めてみよう。

    trans (超えて)+it (行く)      = transit (渡る)
    ab (離れて)     +it (行く)      = abi t(立ち去る)
    ad (の方に)     +it (行く)      = adit (近づく)

    per (通って)   +it (行く)       = perit (死ぬ)

    *vis (見る)    +it (行く?)  = visit (「見る/行く??」=訪問する)???

     

    visit以外の単語の語形成をみると、[接頭辞(前置詞的要素)+動詞]の組み合わせであるが、visitでは、[動詞+動詞]の組み合わせ?になってしまっている。

     

    英単語visitの語源は、ラテン語のvisito(しばしば見る;訪問する)である。それでは、このvisitoの語形成について考察してみよう。visitoは、viso(注意深く見る;見に行く)という単語から作られる。さらに、このvisoは、video(見る)という単語から形成される。この辺りの事情については冒頭に挙げた(5)リーダース英和辞典の分析におけるfreqという文法用語に注意しなければならない。

     

    このfreqは、frequentativeの略記号で日本語では「反復動詞」などと訳されている。ラテン語の文法書Gildersleeve’s Latin Grammar, p.138に以下のような説明がある。
    Frequentatives or Intensives, denoting repeated or intense Action. These verbs end in -tare(-sare), -itare, -titare(-sitare), and follow the spine stem (perfect passive form).

     

    簡単に説明すると、ある動詞に強調・反復の意味を付加したい場合、その動詞のスピヌム語幹をもとに形成することができ、それは反復動詞と呼ばれる。では、具体的に眺めてみよう。

     

    ラテン語動詞videoのスピヌムはvisumであり、スピヌム語幹はvis-となる。この語幹に人称接尾辞を付加すると、1人称単数ではvisoが出来上がる。意味は、videoが「見る」であったのに対し、visoでは意味を強調し、「注意深く見る;見に行く」となる。同じ要領でこのvisoをさらにもう一回、反復動詞にすると、visitoという単語が形成される。意味は、強調・反復の意味がさらに増し、「しばしば見る;訪問する」となる。

     

    この反復動詞の形成過程において、「見る」に「行く」の意味合いが生じてきたことになる。このvisitoが、英単語visitの語源になって行く。

     

    同Latin Grammar, p.142に、動詞の複合語についての語形成についての記述が見られる。これによると、[動詞+動詞]の複合語は、きわめて稀であり、[vis-(見る)+-it(行く)]のような例はないことも示されている。

     

    以上のことから、英単語visitに含まれる「-it」は、「行く」の意味の語根ではなく、反復動詞の形成にともなって現れてきた「-t」であることが確認できる。『ジーニアス』の語源欄では、「見に(vis)行く」と書くつもりが、「見に(vis)行く(it)」のように、おそらく何らかの拍子に「it」が紛れ込み、誤植になってしまった可能性が高い。改訂版では修正されていることを願うものである。というのは、もう10年以上前に出した自分の本の中で、私は『ジーニアス』の分析と同じことをやってしまったからである。自分の本は、増刷の見込みがないので、修正はできない。優秀な『ジーニアス』には、今後も増刷を続けてほしいと思う。

     

    「行く」の意味を担っているラテン語の語根「 i (it)」が、英単語に生きている例を辞書などで調べてみよう。
    exit
    transit
    perish
    ambience
    ambitious
    circuit