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    debug(語学学習について)

    2021.07.01

    debug(語学の学習について)

     

     

     

    同じ本を何度も読むことに意味はあるのだろうか、と問う人がいる。本は一定している。それは物体としてそこにそのままあり、活字は動き出したりせず、数年前のままそこに鎮座ましましている。しかし人は同じようでいてそうではない。

     

     

    「ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」のように人は毎日同じ顔と同じ体があるように見えはするけれど、毎日変化し続けている。日々アップグレードを続けている。生活の上での「誤り」を見つけて小さな修正を加えてよりよく生きようとする。

     

     

    当初はもちろんコンピュータ用語であったけれど、このような現象を英語でdebugと表現している心理学系の本をどこかで最近読んだ。

     

     

    人間は同じ間違えを繰り返すものだ。それは頑固な油汚れのように頭にこびりついて離れない粘着質の性質を有する。

     

     

    したがって、人は自然なこととして、語学学習でも余程の注意力と自分を正す力がなければ見事に同じ間違えを繰り返す。私たちはこれをケアレスミスと言って自分の擁護に走るものだ。

     

     

    実際に、学生の人たちに英語の試験問題を解いてもらい、まるばつをつけてもらう。間違えの解説をして本人も分かったと言う。3日後に同じ問題を解いてもらうと冗談のように同じ箇所を同じように間違えるという現象を何度も見てきた。これが誤謬の粘着性である。こびりついた油汚れ。

     

     

    この執念深い間違え傾向を修復していくには常に自分の頭を思い込みのない状態に保つ必要がある。しかしながら、これが難しい。なぜなら人間の頭はほとんど思い込みでできているからである。

     

     

    思い込みは習慣によって形成される。一度染み付いてしまった習慣を直すのは難しい。人間は同じことを繰り返す。経路依存性(この言葉は経済学用語から始まり心理学の分野で応用されている)。

     

     

    何が正しいのかということに関してはそれ自体議論を要する問題ではあるけれど、少なくとも正しさに憧れる傾向が人間にはある。

     

     

    「誤謬」を頭の中の「バグ」と捉えて、日々、debug(バグを取り除く:誤りを見つけて修正する)のアップグレードをすることが私たちに必要なことである。

     

     

    そういうわけで、数年前に読んだ本を今もう一度読んでみると、何やら本のテイストが変わっているのである。本は同じである。そこには少しだけ進化した自分がいる。

     

     

    同様に、同じ語学の問題集などを繰り返し学習することには意味がある。

     

     

    昨日より0.1ミリでも良くなっていればそれで良い。多くを望まないことが大切である。