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< 英単語の作り方 > 3(人を表す接尾辞概論)
[人を表す接尾辞概論]
「ニューヨーク市民」はNew Yorker、「ロンドン市民」はLondoner、それでは「東京都民」は?これにはTokyoiteという英単語が存在する。JapanからJapanese「日本人」への語形変化は、接尾辞-eseが関わっている。このシステムはChinaからChinese「中国人」への移行と同じである。しかし、AmericaはAmerican「アメリカ人」になる(接尾辞-an)。このように、「人」を表す接尾辞には多種多様なものがあるが、今回は、英単語の記憶と使用という点から対概念に目を向けてみよう。
能動と受動の対立を表す単語として、employer「雇う人」とemployee「雇われる人」、examiner「試験官」とexaminee「受験者」、interviewer「面接官」とinterviewee「面接を受ける人」、trainer「コーチ」とtrainee「訓練を受けている人」などがある。時々、宇宙人にさらわれる人がいるが、そういう人はabductee「さらわれた者」と言われる。必ずしも、接尾辞-eeはすべて受動的な意味を担っているわけではないが、対概念は記憶を容易にするので、能動と受動のセットになっているものは、そのまま覚えておくと有益であろう。
最近での使用頻度は減少の一途を辿り、その座をflight attendant「客室乗務員」に譲り渡すことになってしまったstewardessという単語は、「女性」を表す接尾辞-essにその衰退の源があるのであろう。近い将来、waitress「ウェイトレス」やactress「女優」やprincess「王女」も消える運命にあるのだろうか?検証はできそうもないので、ここではそれぞれの「男性」バージョンsteward, waiter, actor, princeを確認するにとどめておこう。
「ギターを弾く人」はguitaristで、「ピアノを弾く人」はpianistだが、「ドラムを叩く人」はdrummerで、「トランペットを吹く人」はtrumpeterである。楽器によるこの接尾辞-istと-erの違いは何であろうか?guitarist, bassist, pianist, violinist, cellistなどに対し、drummer, trumpeter, bagpiperなどの対立である。-ist系は、指先をこまめに使うちょっと洒落た楽器であり、一方の-er系は体全体を使いどこか人間味のある感じがする。視点を変えてみよう。
単語生成のメカニズムにおいては、語の形成過程に着目することになる。-istの場合には、元になる基本語が名詞(楽器名)であり、その基本語はギリシャ・ラテン語系が大半である。一方の-erでは、*基本語が動詞(その楽器を演奏する)であり、その動詞はゲルマン語系である。
-ist:[名詞(楽器名)+ist] → guitar(ギター)+ ist = guitarist
-er:[動詞(行為)+er] → drum(ドラムを叩く)+ er = drummer
たとえば、drumは「ドラムを叩く」という動詞であり、または動詞として意識された結果、「動詞+er」という形を採用し、drummerという名詞ができあがる。動詞からの派生であるということは、その動作が意識されることになり、奏者と楽器の一体感が生まれ、体を張って演奏する「ドラマー」の姿が浮かび上がり、人間味が現れることになるのかもしれない。また、楽器と奏者一体型には、演奏中の「トランぺッター」の顔を想像してみれば良いだろう!日本語の「歌手」を英語で表現する場合には、sing「歌う」を基本語にすればsingerが生まれ、vocal「声」を基本語にとればvocalistが誕生することになる。さて、singerとvocalistの使い分けはいかに?
Collins COBUILDによると、以下の定義に。
A singer is a person who sings, especially as a jpb.
A vocalist is a singer who sings with a gruop.
WISDOMとGENIUSによると、vocalistは、instrumentalistに対する語としている。
*-erについては、いずれ細かい考察を行う予定。-erの前に来る基本語は、動詞が大部分であるが、名詞(Londoner)や形容詞(foreigner)の場合もある。
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